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日和んぐ

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2008.08.22 Fri 「 注がれる熱物書き

またまた、みそさんに学園パロの小説を頂いてしまいました…!!
もうぬるぬるが止まりません!!!

私もこんな文才がほしい…orz


 



普段はどうしようもないアホのくせに、やる気になったら誰も敵わない。
あんたはいわゆる、天才。
 
 誰もが羨むその才覚を、大抵はバカな事に浪費してる。
僕にはそれが許せない。
 
『注がれる熱』
 
 「起きろ!」
ほとんど悲鳴に近い声で怒鳴りながら、僕は目の前のジャージ男の耳を引っ張った。
「さしみっ!?い、妹子!引っ張らんといて!!取れる取れる!!!」
「寝てないで仕事して下さいよ!」
 僕が文化祭の実行に必要な書類を手に生徒会室に入ると、会長は机に突っ伏して、涎を大量に垂れ流しながら寝ていた。

 取れなかったけど、伸びちゃった…と零す声は情けない。
確かに僕が引っ張った方の耳だけ、不自然にデカくなってる。
全くもって、ふざけた体質だ。
「何でもいいですから、仕事。学園祭の案件だって滞ったままじゃないですか。」
「えー。だって、機材の貸し出し申請とか、めんどくさいんだもん。」
「だもんとか言うな!キモいわ!!会長がさっさと申請出してくれないと、
 僕が諸経費の総額を出せないんですよ。」

 ああもう、四時半を回ってる。
夏場だから日は長いけど、僕の家は学校から遠い。
いつものノリでいると、家に着くのはまた七時を過ぎそうだ。
このまま、此処で時間を浪費してても仕方ない。溜息を吐いて机に書類を起き、
側に置いてあったカバンを拾い上げる。
 
 「妹子?」
「仕事してくれないんなら、僕帰ります。宿題と明日の予習があるんで。」

「いーもこ。」
 
呼び止めた声の質が、急に変わった。僕の心臓が、どきりと跳ね上がる。
「…何ですか。」
去ろうとして机に背を向けたまま、掴まれた左手が熱い。
 
「私はこうして妹子と一緒にいるの、楽しいんだけど。」
背後に、ほんの少し息を詰まらせる気配。
 
 「妹子は、私といるのは嫌…か?」
 
 なんで、そんな苦しそうな声出すんですか。
止めてください。あんたはそんなキャラじゃないでしょうが。
いつもみたいに、
アホみたいに「会長命令だ!ここにいろ」と言えばいいじゃないですか。
 
 「僕、は…。」
腕を掴む掌は熱く湿っていて。
そのまま蕩けてしまいそうな錯覚を覚える。
 
「僕は、「ただいまー!購買部でアイス買って来たよ~…って、あれ?」
 
突然のことだった。
勢いよくあいたドアから、ビニール袋を提げた閻魔先輩が飛び込んできた。
先輩は僕たちを見るなり一瞬だけキョトンとした顔をしたが、
すぐにニヤニヤとした笑顔に変わった。
「おやぁ?仲が良いねぇ~。お二人さ「ハイ。あんたは黙ってなさい。」
すると後ろから賽河が現れ、閻魔先輩の襟首を引っ張って生徒会室から連れ出す。
「何すんの鬼男君っ!?」
「うるせぇ。お邪魔だっつってんだろ。この大王イカ!!」
 
ごめんな、小野、と小さく僕に詫びて二人がドアの向こうに消える。
 
 
 「なんか、びっくりしたなぁ。」
「…つ…まで…」
「ん?」
 
 「……いつまで他人の腕掴んでんだ!このヒジキがぁあああ!!!」
「オアマーーーーーッッ!!!?」
左足を軸にして鋭い右フックをアホ面にブチ込む。
バレリーナのようにくるくる回転しながら、あんたは2mくらいすっ飛んだ。
 
「お先に失礼します!!」
言い捨てて生徒会室を飛び出した。
 
 顔が熱い。耳も熱い。
まるで子供みたいに体温の高い、あんたの熱が僕に流れ込んだみたいだ。
 
 資質も、能力も、権力も。
何もかもに恵まれたあんたには、望めば全てを手に入れられる力があるでしょう?
それなのに、なんで僕なんですか。

僕にはそれが、分からない。
 
 
[おしまい。]

2008/08/22  『注がれる熱』 (c)みそ汁
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